issy

2024年夏・雲南省トリップ(大理、香格里拉)

第2回の雲南レポートです。
前回のレポートは思いのほか「レポート見ましたよ、雲南むっちゃいいですね」と言われることがあったので調子に乗っています。実際は雲南も今年に入って3回目なのですが、2回目は仕事に偏っていたのでレポートなしです。また今回のツアーは「一夕餐桌」の袁さんが企画したもので、このブログでも写真もいろいろお借りしています

同行してもらったのは、無邪気に雲南を楽しめそうで、将来的に少し仕事になりそうで、思いついたときにすぐ横にいた人みたいな感じで、観光旅行というよりも視察ツアーのような形にしてもらいました。自分が見た雲南をみんなにも、が根本精神なので、必然的に自分にとっては既訪なところを案内することが多いです。旅の時間は限られているので、未訪の地の驚きか既訪の地の親しみか、どちらを取るかはいつも悩ましいところですが、深掘りしてみたいリピート確定地がいくつかあるので今回は割り切りも早かったです。

______________________
◉蒙自黄牛米线 (Méngzì huángniú mǐxiàn)

もう3回目、何度食べても飽きがこない。このような日常性ある食に旅先で出会えるのはとても貴重です。メニューはこれだけ、見事なまでの1SKU。

雲南省蒙自市発祥、独特な風味の黄牛の牛骨スープ、ハーブ・スパイス。トッピングを大胆することで、複雑な味わいが高次元で邂逅します。3回目でようやくトッピングの深さが肝なんだとわかる。生姜、七味、卵、納豆、おしんこを駆使して味を積み重ねる吉野家の牛丼のトッピング手法にも通じるところがあり、日本人にもフィットするのではないだろうか、仮説は粗いが。

雲南の温暖湿潤な気候で稲作文化が育まれ、北部の小麦による麺文化の影響を受けてできたのが米线 だと聞いた。農耕文化は日本に伝わったけど、米の麺文化は伝わらなかったのも興味深い。雲南内でも地域によってさまざまな米线 があり、スープやトッピングも多様性がある。雲南は盆地が多いと聞くが、盆地ごとに街があり、街ごとに味わいが違うイメージだろうか。それぞれの風土で磨き込まれた味わいだろうし、不味いはずがない。他のタイプのものも知り尽くしたい。


これは蒙自ではなく別のところの米线屋で朝ごはん。朝昼晩でたべることができる、日本的にはどんみたいなポジションか。中国の人はとにかく朝ごはんが大事で、夜抜くことはあっても、朝を抜くことはないらしい(n=1)。

 

______________________
◉石垣の村

大理市の旧市街にある広大な敷地の約100年くらい前の石垣の村の廃墟。石を積み重ねるのが一番手軽な建築だったのだろうか。

大理市の再開発対象エリアになっているらしく、一般的な住居エリアになるのか、この佇まいを活かした観光拠点にするか検討中とのこと。中国にはまだこんなのがゴロゴロあって、しかも資本主義的効率重視も一巡したタイミングでまだ残っている、そんなタイミングが羨ましい。それに携わる設計者やデザイナー、プロデューサー、食の人、ものづくりの人がダイナミックに活躍できる場ある、つまり仕事がたくさんある。違いを作り出すことに四苦八苦している日本の都心部とは差がある。

______________________
◉市場

定番の市場。夏らしくフレッシュなものや、いかにもさっき山からとってきたものですよっぽいものが並ぶ。生活者のための市場がこの規模で賑わっているからこそ、観光客の我々も楽しめる。都市部にはスーパーもあるらしいけど、こうした市場が淘汰されずに残っているのには地方政府によるなんらかの政策があるからだろう、やるじゃないか。どんなおばあちゃんでもほぼ全員アリペイのQRコードを持っていて、電子決済に対応しているので国としては税金の取りこぼしはないだろう。

______________________
◉WAT号


どうやらイジるという概念は万国共通なようだ。
いろいろ分かり合えないこともあるが、少しでも通じ合えると嬉しい。

______________________
◉お祭り


郊外に向かう途中、民族衣装の大集団のお祭りに遭遇し、車を停める。大理=白族で疑わなかったけど、よく見ると衣装が白でないので白族ではないっぽい。何族か知っている人いたら教えてください。ほとんどがご高齢のおばあちゃんしかいない。楽しそうでもつらそうでもない、まっすぐな表情。

ちりとり造詣が深いおじさんたち、ちりとりと籠ご購入。

______________________
◉梅林

何か果物を栽培しているところに連れていってほしいと依頼をしていたところ、山奥の最奥の梅の生産者に連れて行ってもらった。広さは100ha?いや覚えていない。

大理市は有機栽培を政策的に推進しているという話はいろんな中国の方や、ChatGPTからも聞いていたので裏は取れていたのだけど自分の目で見るまでは信じないことにしていた。結果、広大すぎる山の連なりに対してほぼ手作業、推定60キロのズタ袋の梅を運ぶおばあちゃんの姿をみて、そういう次元の話ではないのはすぐに理解した。拾いきれない、使いきれないくらい実がなっている。国土が広いということはそういう生態系。

______________________
◉一路シャングリラへ。

雲南省迪庆藏族自治州香格里拉市(デチェン・チベット族自治州シャングリラ市)。

急速に標高3000m超へと走り切ったもんで、高山病に。しばらく酸素ボンベとお友達。急な頭痛、吐き気、一歩足を動かすと息がきれる。せっかつ連れてきてもらったシャングリラのクラフトビール工場は気持ち悪くてビールが喉を通らない。せっかくのディナーも気分が上がらず、味覚でおいしさは感じるものの、それ以上の嬉しさにならない。


気分が悪かったので部屋の写真を撮り損ねたが、シャングリラの宿はとても素晴らしかった。中国の最果てにこんな立派なホテルがあるとか想像もしなかった。全部屋で酸素調整マシンつき、そのおかげで翌朝は全快。


ポタラ宮殿を思わせるチベット仏教の寺院。生きているうちにチベット仏教に触れることができるとは思っていなかった。

______________________
◉松茸狩り

「シャングリラで松茸狩りします」とかいう神秘的な謳い文句でみんなに来てもらったので、松茸取れなかったらどうしようという心配はあったが、広大な敷地は赤土、赤松に覆われていて、松茸が取れる匂いはムンムンにした。松茸ハンター・チベット族のおじさんの縄張りっぽいところで松茸以外にもさまざまなキノコを採取。まだ走りの時期なので、あと1ヶ月ほどするとキノコ取り放題ボーナス画面で惜しかったね、とのことだった。キノコとの対話が進みすぎて、山奥に入ってしまい、10分ほど遭難したのはmitosaya社の江口さん、シャングリラの地で江口さーんと呼ぶ声がこだました。

______________________
◉一夕餐桌

今回の3泊すべてのもてなしはすべて素晴らしかったけど、旅の最後のランチは別格。シャングリラに牧場を切り開き、キノコを模した茅葺きのパーティースペースを作ってまして。もちろん今回の旅のために作られたものではなく、さまざまな中国のVIPに食、自然、この地の文化を体験してもらうためにつくったとか。そのパーティーのために駆り出される音楽家、料理家、民族衣装の女の子たち。
日本的にはあざとい仕込みが多いということかも知れないけど、あざとさは異国情緒、ホスピタリティ、エンターテイメントとして昇華されていた。いまだに、なんでここまでもてなしてくれるのかという、日中のもてなし文化の差が消化できていない。

もちろん最後のランチ以外も、袁さんプロデュースの食卓はつねに全力投球。
 

まあ、文化の差あるよね、っていうのは言い訳で、日本でどんなお返しができるかと想像してみたけど、解決策はない。このスケールにはちょっと敵わないね。

今回の雲南トリップのテーマは4つでした。

1)雲南はオーガニックか?

この問いかけ自体がナンセンスだった。そもそも日本でもナンセンスな問いかけ。どういう環境で、どういう人が、何に挑んでいて、どう生活されているかということはすべて連続していることだし、オーガニックかどうかだけを切り取って何かわかったような気になるのは違う。

雲南は、ひたすら植っていて、実っていて、収穫して、商いと家族、コミュニティへの分配にあてているように見える。

梅やキノコを少し見たからといって全体を語は語れないが、どの果実、作物でも大なり小なり同じような環境なのだろう。自然栽培という言葉が近いかもしれないが、そういうストイックなことでもない。ざっくり「雲南のもの」という言葉だけで何かの価値が伝わるとよいのだが。

2)友人たちの反応はどんなものか

日本でもひとかどの仕事をしている人たちが、雲南の風土は違うよね、っていうこと以上に仕事や生活に活きる何かを持ち帰ってくれるとよいな、と。あんまりすげーすげー言ってる人はいなかったように思われるが、言葉にならずとも、息を飲んだり、圧倒されているような節は見受けられたので、少しホッとしています。うるさ方のこのおじさんの表情を見れば大丈夫か。

3)雲南に仕事を生めるか
ムンムンに感じますよね。温度差が風を生むなら、この価値差はビジネスを生むはずで、実際やりたいアイデアは5つくらいあるけど、この距離差を埋める解決策がない。あと、誰がやる問題。雲南で骨を埋めてよいって人がいたら連絡ください。

4)ヒグマドーナツ春日井順のルーツを探る

彼と中国を旅していて、さんざんチベット族にそっくりだと言われて来ていたが、そのまんまだった。

次はラサに行くとか、敦煌に行くとか、ウイグル自治区でスキーリゾートに行くとかさまざまな噂が出ているが、成果物出してからにしたいと思います。今のところ成果物ゼロ。